グラフィックデザイナーなら一度はデザインのやり直しは経験済だと思います。
若い頃は本当に心が折れそうで大変でしたが、今では耐性もついて一度や二度のやり直しではへこたれない強さを身につけました。
そうは言ってもやっぱりデザインのやり直しは、できればしたくないですよね。
今回は、デザインのやり直しや修正の回数が少なくなる方法を紹介したいと思います。
少しでも参考になれば幸いです。
デザインのやり直しや修正の回数が多くなる原因
デザインのやり直しになるには必ず原因があります。
それはクライアント側の場合もあるしデザイナー側に原因があるときも。
それぞれどんな場合か見ていきましょう。
クライアントに原因がある場合
伝達ミスや画像や資料などを送り忘れている事も多々ありますが、個人的にクライアントに原因がある場合は以下のようなタイプに分かれると思います。
- ①デザイナーに任せているが、途中からデザインに関与したくなるタイプ
- ②元デザイナーでこだわりが強すぎて上手く伝えられないタイプ
- ③元デザイナーでこだわりが強すぎて、社内で打ち合わせた事と違う依頼をする
それではもう少し詳しく見て行きましょう。
①デザイナーに任せているが、途中からデザインに関与したくなるタイプ
最初は完全にデザイナーに任せようと思っていたようですが、初稿のあがってきたデザインを見たとたんに色々言いたくなってしまうタイプです。
そのやる気スイッチがどこにあるのかはわかりませんが、こうなる原因として、クライアント側にあがってきたデザインがダサくて修正しないと上司に見せられない場合と、ほどほどにデザインが良くて、担当者のやる気スイッチが入ってしまう場合です。
こうなってしまうと最悪何案も作り直さなければいけなくなってしまいます。
②元デザイナーでこだわりが強すぎて上手く伝えられないタイプ
都会でバリバリのデザイナーとして働いていた方が、地元の企業に再就職するという話はよく聞きます。
そういった方がクライアントの担当者になる場合、こだわりが強すぎて上手く伝えられないことがよくあります。
ああでもない、こうでもないと修正しているうちにスケジュールがかなりきつくなってしまいます。
最悪の場合、途中のデータを渡して担当者がデザインすることもあるそうです。
③元デザイナーでこだわりが強すぎて、社内で打ち合わせた事と違う依頼をする
これもよくあることで、クライアント側で決めたコンセプト以外の依頼をしてくる担当者がいます。
社内で決まったコンセプトに不満を持っているタイプです。
コンセプトが決まっているのに、それからズレたデザインは決まることはなく、余計な時間を取られることがあります。
その時間を少しでもコンセプトにそったデザインに使えば、もっと良いデザインになると思うんですが、どうしても作ってくれという依頼は断ることができません。
暴走パターンの担当者は本当にやっかいです。
デザイナーに原因がある場合
当然、デザインのやり直しや修正の多さにはデザイナー自身に原因がある場合もあります。
いろいろ原因はありますが、以下のパターンに当てはまると思います。
- ①デザインのレベルが低い
- ②コンセプトを理解していない
- ③自分の作品作りと勘違いしている
それではもう少し詳しく見て行きましょう。
①デザインのレベルが低い
最初からデザインが上手い人は多くはありません。
多くの駆け出しのデザイナーはデザインする中でセンスを身に付けながら仕事に取り組んでいます。
ときには自分のレベル以上のデザインを任されることもあると思いますが、そういうときは自分で判断せずに、上司や先輩にアドバイスをもらいながら進めると、やり直しや修正が少なくて済みます。
どうしてもデザイナーとなると、自分の思い通りにならない事に焦り、イラつき、最悪の場合は向いていないと思い込み、デザイナーとしての道を諦めてしまう人も多いんです。
自分に自信がなくなってしまう前に、友達でもどんな人でもいいので相談するようにしましょう。
②コンセプトを理解していない
デザインする前にコンセプトを理解していなかったり、自分の思い込みだけでデザインすると、やり直しや修正が多くなります。
③自分の作品作り
自分のデザインに自信がある事はいいことですが、それを勘違いして自分の作品作りと勘違いしているデザイナーもいます。
特にデザイナーになってから3,4年と若い人に多い気がします。
デザインはクライアントがあっての仕事です。
先ほども言いましたが、コンセプトをよく理解して、クライアントの意向を十分理解してからデザインするようにしましょう。
デザインの仕事は自分の作品作りではありません。
デザインのやり直しや修正の回数が少なくなる方法!
それでは、デザインのやり直しや修正の回数が少なくなる方法を紹介したいと思います。
これで完璧に修正がなくなることはありませんが、実践すれば以前よりは少なくなると思います。
コンセプトを明確にする
コンセプトを決めるのに良く使われるのが「5W1H」。
- When=いつ
- Where=どこで
- Who=だれが・だれに
- What=なにを
- Why=なぜ
- How=どのように
ここに案件の内容を当てはめながらコンセプトを見出していく方法です。
とくに重要なのが「Who=だれが・だれに」の部分。
よくありがちなのが、単純に「若い人」とか「家族」とか、ターゲットを曖昧にしてしまうことです。
「若い人」と定義しても男なのか女なのか、10代なのか20代なのか、もう少し具体的に言うとそんな趣味を持った人なのか。
という具合にターゲットを絞っていくといいでしょう。
そうすることでコンセプトが明確化されデザインも的を得たものに仕上がります。
それでも決まったコンセプトに疑問を持つようであれば、再度クライアントと打ち合わせをするようにしましょう。
資料集めは念入りに
デザインやコンセプトを決める前に、案件に関する資料集めは念入りに行いましょう。
どうしてもインターネットだけの情報になってしまう事も多いですが、クライアントとのコミュニケーションの中からとか、書店に足を運んでみるのもおすすめです。
足を動かして得た情報は、意外な所にデザインのヒントが隠されている事があります。
しかし、集めた情報が多いとどうしても考えすぎてしまうため、複雑な答えや見当違いのコンセプトになってしまう事があります。
そうやって集めた資料をまとめるときは、極力シンプルな答えを出すようにしましょう。
仕上がりのイメージを共有する
クライアントとの打ち合わせのなかで、仕上がりのイメージを共有すると、デザインのやり直しが無くて済みます。
できれば打ち合わせの中でラフデザインが書けるとベストです。
細かいディテールが仕上がりに影響する
デザインしていて細かいところに息が届いていないと、クライアントに見透かされます。
まずはトリムマークの塗りだしの部分を見てみましょう。
ショートカット⌘Yでアウトワークのみで見てみると、画像や図形などがトリムマーク付近で揃っていないのが分かります。
見えなからいいやとか、印刷には影響ないからという理由でこういう細かい部分に神経が届いていないデザイナーは良いデザイナーとは言えないと思います。
下の図のように揃えるところはしっかり揃えておきましょう。
フォント選びは慎重に
だいたいAdobe illustratorを開くと最初に選ばれているデフォルトのフォントが小塚ゴシックになっている事がほとんどです。
面倒くさい、時間がないからという理由でいつも小塚ゴシックばかり使っているデザイナーが少なからずいます。
小塚ゴシック自体は良いフォントなのですが、全てのデザインにたいしてそればかり使っていては、デザインの幅が狭くなってしまいます。
私の場合、コンセプトに従ってまずはゴシック系か明朝系かを選び、そこからMacに入っているフォント全てから、これだというフォントを選んで使っています。
フォントの縦横比率は100%で使う
他のデザイナーのデータを使う事が度々あるのですが、よくフォントの縦横比率がめちゃくちゃな人がいます。
フォントサイズは7.1599、行間は12.529、縦比率は63%、横比率は128.665。
もうめちゃくちゃです。
こういうフォントの使い方をしていると、必ずクラアントに見透かされ、デザインのやり直しや修正が多くなってしまいます。
フォントは必ず最低でも縦横比率は100%で使うようにしましょう。
空きや揃えるところはしっかり揃える
デザインにおいてホワイトスペースをちゃんと使いこなせることが良いデザインの条件でもあります。
それにはレイアウトの基本が大事になってきます。
別記事で解説しているのでこちらも合わせてご覧ください。
具体的にどういう所を揃えるのかと言うと、下のチラシをご覧ください。
空きすぎと狭すぎで3か所を指摘していますが、こういうデザインをする人が多いように思えます。
これを改善するだけで、読み手に気持ちよく見てもらえます。
当然、クライアントにもこういう箇所って口では言いませんが、どうにかならないかと頭を悩ませていると思います。
このほかにもフォントを左で揃えるのか、中央ぞろえなのか、中途半端に配置するデザインも見ることがあります。
そういうところも意図的にずらしてあるのであれば、違和感はないのですが、中途半端にずらしてあると気になってしかたがありません。
素材選びは妥協しない
イラストACやいらすとやなど、フリー画像やイラストを使う事が多いと思いますが、そういった素材を選ぶとき、何も考えずに選んでいませんか?
フリーの素材であっても、デザイン的に良いものとそうでない素材があります。
選ぶのはデザイナーの仕事です。
何が言いたいのかと言うと、妥協しないで選んで使って欲しいと言う事です。
これでいいやとか、何も考えないで素材を選ばないでください。
そういったところもクライアントはちゃんと見ています。
イラストだけの変更ならいいのですが、それが全体に及ぶとおお直しややり直しの原因になってしまいます。
クライアントのデザイン決定権は誰なのか
デザインをする上で大直しややり直しの原因の大きな部分として、クライアントのデザインの決定権が担当者ではなくその上司にあり、担当者でOKをもらっていても上司のところでNGをもらうパターンがあります。
かといって担当者の意見をないがしろにしてもいいという事ではなく、担当者と協力してデザインを決定していくのが望ましいでしょう。
まとめ
ということで今回は、デザインのやり直しや修正の回数が少なくなる方法!細かいディテールが重要!という内容でお届けしました。
デザインのやり直しは何度経験しても嫌なものです。
私は25年もの間、この道で頑張ってきたので、相当の事がない限りくじけることはなくなりましたが、初心者や駆け出しのデザイナーにとっては、心が折れる事ばかりだと思います。
ここで書かせていただいたことが少しでも参考になれば嬉しい限りです。